相続放棄と寄与分

相続放棄と寄与分の関係

相続放棄が家庭裁判所で受け付けられると、申述をした相続放棄者は寄与分を主張することができなくなります。

【寄与分】とは、法定相続分どおりの分配では相続人間の公平を図れない場合に、それを是正するめ設けられた制度です。

特定の相続人が被相続人の財産の維持や増加に貢献したような場合が、これに当たります。
その相続人は相続時にその寄与分相当額を上乗せした遺産を相続することができます。

たとえば、下記の事例で見てみましょう。

事業を営んでいる父親が死亡し、相続人が長男と次男の二人だったとします。
次男は父親と共に家業を盛り立てるため、毎日、朝から晩まで汗を流し身を粉にして働いていました。
一方、長男は実家を離れ公務員として働いています。
実家に顔を出すこともありません。

この二人について平等に相続財産を分配するとどうなるでしょう。

この父親の相続財産は次男の助けがあったからこそ、築き上げることができたわけです。
遺産を法律の規定に従い平等に分配したのでは、次男も納得できません。
父親が自分の力だけで財を成したのであれば法定相続分を目安に協議をすれば何の問題も起こりません。
不満が出ることもないでしょう。

しかし、本事案のように特別の寄与をした次男とそうでない長男の取り分が同じでは、そうはいきません。
被相続人の財産に対する貢献の違いから当然、不満も生まれるでしょう。

その不満を解消するために寄与分を定め分配する財産を調整することにしたのです。

この制度趣旨から考えると相続放棄をした者も寄与分を主張できるように思えてしまいます。
しかし、法はそれを否定しています。
寄与分を相続人に限定せずにすべての人に認めてしまうと相続を取り巻く権利関係が複雑になり、多くの利害関係人に損害を与える可能性が出てきてしまいます。

そこで相続における寄与分は相続人にのみ認められる権利としたのです。
内縁の妻や子の配偶者などは、特別の寄与をしても、寄与分相当額の相続財産を渡せとは主張することができません。
相続放棄をした者、相続欠格者及び廃除された者も寄与分を主張する権利はありません。

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    民法904条の2
    1 共同相続人に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算出した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

    2 省略

    3 省略

    4 省略
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この条文によれば寄与分が認められるのは、次のようなケースです。

1 被相続人の事業に関する労務の提供があった場合
2 被相続人の事業に関する財産上の給付があった場合
3 被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与した場合
寄与分が認められるためには特別な寄与(貢献)が必要です。
家族や親族として通常、要求されている扶助行為では寄与分は認められません。
被相続人の事業を手伝っていたとしても妥当な対価を取得していれば寄与分は認められません。
特別の寄与といえるためには無償で労務を提供するか、または妥当とはいえない少ない対価で労務を提供することが求められるでしょう。

療養看護についても、通常の看護では寄与分は認められません。
入院中の家族のお見舞いとして月に2、3回顔を出すだけでは特別の寄与とは呼べません。
親子、兄弟姉妹、夫婦には互いに扶養する義務があります。通常の看護では、この相互扶養義務の範囲内だと考えられ寄与分が認められことはありません。

■寄与分の算定
寄与分の額は、相続人全員の協議で決定します。
協議が調わない、または協議をすることができないときは、家庭裁判所に対し調停や審判の申し立てをします。

まとめ

相続放棄をした者は、被相続人の財産形成に大きく貢献したとしても寄与分を主張することはできません。

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