相続放棄と医療費制度
相続放棄と高額医療費制度について
相続放棄をすると、相続財産は一切受け取ることができなくなります。
では、相続放棄を家庭裁判所へ申し立てると【高額医療費制度】を利用し、還付金を受け取ることができなくなるのでしょうか。
【高額医療費制度】という言葉を聞いたことがない人のために簡単に制度の概要をご説明します。
【高額医療費制度】とは、公的医療保険における制度の一つで、月の初めから終わりまでの医療費が高額になった場合に、一定の額が払い戻される制度です。
高額医療費は、年齢や所得に応じて、ご本人が負担する医療費の上限が定められており、所定の条件を満たすことにより還付が受けられます。
健康保険加入者における医療費の負担額は、原則として3割に相当する金額ですが、投与された薬や施された術式によっては、その金額が給与所得などよりも高額になってしまうケースも珍しくありません。
そこで、高額医療費制度が制定されました。
では本題に戻ります。相続放棄をしても高額医療費制度を利用し、高額医療費の還付金を受け取ることはできるのでしょうか。
結論としては相続放棄をすると高額医療費の還付を受け取ることはできません。
相続放棄をすれば、先述したように被相続人の相続財産は引き継ぐことができません。
国民健康保険の場合、高額医療費は世帯主に支払われます。
被相続人が世帯主であれば、高額医療費の還付は被相続人に支給されることになり相続財産に組み込まれますので、相続放棄をすると、その還付金を受け取ることはできなくなります。
健康保険の場合は、被相続人が被保険者であれば、国民健康保険と考え方は同じです。
ただし、相続人自身が世帯主または被保険者である場合には、被相続人の相続財産ではないので、相続放棄をしても受け取ることができます。