相続放棄と賃貸物件
相続放棄と賃貸物件について
相続放棄を検討している方の中には、被相続人が賃貸物件に一人で暮らしていたというケースがよくあります。
そして被相続人の死亡後に、
「放っておいたら家賃だけがかさむ」、
「大家から連絡があり、早く引き払って欲しいと言われた」、
などの理由から、相続人が賃貸を解約、家財の処分を行ってしまうことがよくあります。
しかし、被相続人の家財は、もちろん被相続人の財産です。
また、「建物を借りている」といった賃借人という契約上の地位も、それ自体が財産としての価値を有します。
つまり、これらを相続人が処分してしまった場合、通常それは「相続の承認」とみなされてしまい、いざ相続放棄をしようとしても、できなくなってしまう可能性があります。
ちなみに賃貸を解約せず放っておいた場合、家賃が発生し続けてしまいますが、それも被相続人の債務でありますので、相続の放棄をすれば相続人が支払う必要はありません。
相続の放棄をしようとご相談頂いた方の中には、既に賃貸の解約や家財の処分をしてしまったという方が何名かいらっしゃいました。
しかし、解約した賃貸の契約上の地位や、処分した財産に、ほぼ財産的価値がない場合は、放棄は認められる傾向にあると思います。
親族が亡くなられて混乱している最中、賃貸契約の存在を知れば、なんとか処理しようと考えて行動してしまってもやむを得ないと思います。
実際、同様の事案で裁判所に放棄が認められた例もあります。
しかし、あくまで裁判官の判断によって結果が容易に真逆になりうる微妙なものと思われますので、軽々しく解約・処分をしないことをおすすめします。
ちなみに、賃貸を解約した際に戻る敷金を受け取ったり、家財処分の際の費用を被相続人の財産から支出したりした場合、相続放棄が認められる可能性はさらに低くなると思いますので、気をつけて下さい。